「かっこいい、稼げる、革新的な水産業にしたい」。3K(きつい、汚い、危険)産業と揶揄されてきた漁業のイメージを変えようと立ち上がった青年たちがいます。
2014年7月、宮城県内の若手漁業者や食品加工業者ら13人が創設した一般社団法人「フィッシャーマン・ジャパン」。ワカメやカキ、ホタテなどの生産、加工、販売を共同で取り組み、震災で窮地に陥った漁業を個の力だけでなく、みんなの力で再起させると誓い合った仲間たちです。「震災以前、漁師が浜を越えて協力し合う機会はめったにありませんでした。実際にひざを交えると共通の悩みがあり、不安・不満を知ることができました」。
魚離れや価格低迷、震災の風評被害だけが漁業の今日的な課題ではありません。震災前からあった後継者問題は廃業者の増加などで深刻化しています。厳しい環境の中で漁業が存在し続けるには「次世代に自信を持って引き継げる持続可能な漁業を実現することが重要」と阿部さんは考えます。キーワードは「新3K」。高収入に加え、旧習にとらわれず先端を歩む職業への変身を模索し、漁業体験ツアーや担い手育成イベントなど一般の人たちにも漁業の魅力をアピールする企画を展開しています。
仕事が多様化する現代、「単に儲かるだけなら魅力的な仕事とは言えません。食を支える誇りや、かっこいい生き様といったプラスイメージを広め、子どもたちがあこがれるような魅力いっぱいの漁業に進化させたいですね」。被災した宮城、東北の地ゆえに生まれた新たな風を発信していきます。
阿部勝太さん 石巻市出身。ワカメ養殖を営む漁業家の3代目。地元の高校卒後、仙台や東京の会社に勤務し、2009年に帰郷して家業を継ぐ。震災では自宅や作業場が壊滅したが、11年に地元で漁業生産組合「浜人」を組織し活路を開く。
2017年3月9日